令和6年度東大入試考察

文理共通英語、大問1b、大問4、大問5

1bの文章補充問題はここ数年前から出題されていますが、今年はやや難しいと感じます。共通テスト現代文と同様に「周囲にある語句(フレーズ)と選択肢の英文を照らし合わせること」で正答率を上げられます。大問4aの正誤問題は英文の構造を読み取ることが出来れば6割は得点できるでしょう。4bの英文和訳は本年度も得点源にすべきです。大問5の長文読解は、比較的読みやすい内容です。空欄補充も標準的な難度なので8割くらい得点したい。

理系数学

予想に反して、即ち一昨年、昨年度と比較してかなり易化しています。今年も粒ぞろいの難問を出してくると予想していましたが。無論、答案作成の過程でケアレスミスを誘発する設問があります。私見として、理Ⅰで50%(60点)理Ⅱで45%(55点)理Ⅲで75%強(90点+α)が合格ボーダーと考えます。

物理

大問2「コンデンサーを含む電気回路と単振動」:コンデンサー極版間に生じる電場は両極版上に在る電荷からどのように、即ちガウスの法則より定式化されるか等、深い理解を要する設問と思料します。

大問3「ドップラー効果」:うなりは振動数の差異から生じる現象を基に多様な状況におけるドップラー効果の立式を問う設問。典型的な出題である一方で計算量は多いです。

総じて昨年度の物理を「4回転半の難度」とするならば、今年は3回転くらいの良問です。

化学

大問1(I) 有機化学 カルボン酸とアルコールのエステル化 : mol 濃度の計算は得点したい。余力があれば構造式決定も部分点をもぎ取りたい。

大問2 (I) ヨウ素を用いる酸化還元反応 (共通テストにも頻出) :電離平衡を理解していれば得点できます。

(II) 金イオンの出題: イオン化傾向の最も低い金ですが、電池・電気分解そしてファラデー定数が何であるかを理解していればここも得点できます。

大問3 (I) 気体の状態方程式とヘンリーの法則:ヘンリーの法則は高温低圧において水溶液に何個の気体分子が溶けるかを定式化した経験則です。従って「標準状態」を問う形式ならば mol に変換すると分かりやすいです。

(II) リン酸滴定  第1中和点、第2中和点において生成されるイオンの物質量は各々基本通り求められることに留意しましょう。加えて緩衝液と加水分解反応における近似計算への理解が必須です。

総じて今年の化学は、学習量に応じて得点を重ねられる良問が多いです。

代表 吉松伸樹